ぼくは音楽制作を行うメインPCでトラックボールを使っている。DTM関連書籍を読んでいると、ミックススタジオの写真などでトラックボールをよく見かけるので気になっている人も多いだろう。でも、マウスに慣れていると本当に必要なの??と漠然とした疑問を持ってそのままの人も多いと思う。今回はDTMというちょっと限定的な目線でトラックボールについてレビューしてみる。

導入する時点でトラックボールに関してはほとんど無知だった。まずはトラックボールってなにか知りたい。そんなときにとっても参考になったウェブサイトがこちら。
猫のトラックボールルーム
このサイトの冒頭で言い放たれている決定的なメッセージを引用してみる。

トラックボール。
確かにそれをあえて選ぶ理由は無い。

しかし繰球の快楽は私を捕らえ、
心優しき本末転倒は、
操作から「理由」を排除する。

故に、私はいつだって幸せなのだ。

トラックボールを熟知した愛用者がこう言うのだから、まぁきっとその通りなのだろう。で終わってしまってはこの記事の元も子もない。

もちろん猫さんもこのサイトの中でトラックボールの有用点を挙げているのでそちらも参考にさせてもらいつつ、ぼくなりにDTMにトラックボールを使用する優位性を考えてみる。

  1. ^o^)/場所をとらない
    トラックボール一般論。通常のキーボードの他にオーディオインターフェイスやMIDIキーボードなんかも机の上に置かなきゃならんDTMerにとって省スペースは永遠の課題。そんなとき、場所を固定して使用するトラックボールはスペースの有効活用にもってこい。最近ではワイヤレス製品も出ており、省配線化にも貢献できるかもしれない。
    しかしながら実際にどの程度省スペースになってるのかは機種による。ぼくの使っているトラックボールはパームレストも含めると案外大きく場所をとるが、マウスを動かすスペースを考えるとたぶん省スペース化にはなっている(と願いたい)
  2. ^o^)/腱鞘炎になりにくい
    実は、ぼくがトラックボールの導入を真剣に考えたのはこれが大きい。DTMerは、集中していると驚くほど長時間作業に没頭してたりする。あーでもないこーでもないとプラグインのつまみをマウスでいじっていると、無意識のうちに同じ手の形でマウスを移動させているので長時間手首にストレスがかかっている。「よし!これでミックスOKーあれ?なんか手首痛いな」ということになりやすい。これじゃあギター録音にも支障が出る。特に自分の場合は、デスクが胸のあたりの高さなので余計に負担が掛かりやすかったようで、しょっちゅう手首の痛みには悩まされてた。
    トラックボールの場合、手を移動させる必要がないから手首に負担がかかりにくい。同じ手の形に疲れてきたら、機種にもよるけれどある程度手の形を変えながら作業できる。手首の痛みは、トラックボールの導入でかなり改善されましたぞ。
  3. ^o^)/画面の端から端まで瞬間移動
    DTMerにとって、PC画面が大きすぎて困ることはない。できることならトラックからコンソールからプラグインからぜーんぶ見渡しながら作業したいくらいだ。かくいうぼくも作業はデュアルモニターで左にコンソールビュー、右にトラックビューを置いている。
    しかし画面が大きくなるにつれマウスの移動は大変。トラックビューとコンソールビューをカーソルがいったりきたりするのも一苦労で、限られたスペースでマウスを移動させていると最悪の場合マウスを一度持ち上げて移動させなければ目的の場所までたどり着けない。
    かといってマウススピードを上げてしまうと,プラグインのつまみの微調整にイライラ。
    そんなあなたの悩みを一気に解決できます!(テレビショッピング風)
    トラックボールは手首を動かす必要なく、ボールを転がすだけでカーソルが移動する。しかも、重めのボールの機種を選べば、少し勢いよくクルッとやればシュー!っと画面の端から端も容易に移動可能!難しく言うと、慣性の法則を利用してボールを転がすことでクルッとやればシュー!になるのだ。こりゃ便利!
  4. ‘o’)?DTMにおける操作性
    使ってみた感じ、DTMにおけトラックボールの操作性はいいところと悪いところがある。
  • いいところ①微細なカーソル移動
    トラックボールは、指を動かさずに腕で動かすマウスと違って指先でカーソルをコントロールするので、微細なポインターの移動ができる。1ピクセル単位のコントロールでつまみ調整はバッチリ。
  • いいところ②ポインターを止められる
    DTM目線ならではのいいところは、カーソルを止めることがマウスにくらべて容易なこと。これ意外に重要思うワタシ。たとえば、プラグインのつまみを操作してオートメーションを書くとき、マウスだとクリックをしただけでも微妙にカーソルが動いてしまう。なのでドラッグを終わったときと、次にドラッグを始めた時の位置がズレてしまう。トラックボールであれば、ボールに触れていなければカーソルは全く動かないので、最後にボタンを離したときの位置と同じ位置から次のドラッグを開始できる。
  • いいところ③スライダーの操作がマウスよりもそれっぽい
    コンソールのスライダーを動かすとき、親指で左クリックをしながら人差し指~薬指の腹で上下に移動させるので、マウスで操作するよりそれっぽい。リアルタイムでボリュームオートメーションを書くときなんかは上述のポインターを止められる利点も含めて操作性はかなり良いと思う。フィジカルコントローラーには及びません。
  • 悪いところ 複雑な曲線を書くのは苦手
    トラックボールは複雑な曲線を書くのが苦手だ。だから、もしDTMでそのような機会があるとトラックボールではやりにくい。たとえば、ローランドのR-MIXというプラグインは図形を操作して音域とパンの広がりをリアルタイムに変化させられるのだが、直感的に図形をリアルタイムで変化させるというのは至難の業。まぁ、そのようなプラグインは特殊なので使う機会はあまりないかもしれないけれど。

‘o’)?じゃあどのトラックボールを使えばいいか
これまでトラックボールのDTMでの使い勝手をレビューしてきたが、実際にトラックボール売場に行ってみるといろんな種類がある。一番取っつきやすそうなのは、安価なマウス型のトラックボールだ。でも、今まで書いてきたトラックボールの利点は実はぼくが使っているKensingtonというメーカーのExpert Mouseでの話だ。売場では高価な部類に入るだろう。しかし、機種によっては上記の利点を十分発揮できないものもあるので、トラックボールを選ぶ際には下記を参考にしてほしい。

  1. 本体の大きさ
    デスクの省スペース化にはもちろん小さなものほどいい。しかし、小さなトラックボールほどボールの直径が小さいので、実際にはデスクのスペースと②との兼ね合いで選ぶべし。
  2. ボールの大きさ
    慣性の法則を生かしたカーソル移動はボールの大きなものほど得意。小さなものではボールが転がりにくく、すぐに止まってしまう。また、繊細なカーソル操作は大きいボールの方が効く。適度な重量感があるのでカーソルが行きすぎたりすることも少なくなる。
  3. ボールの位置
    ボールの位置によってどの指でボールを動かすのかが変わってくる。たとえばマウス型だと親指の場所にボールがあったり、人差し指の腹にあったりする。四角いタイプだとだいたいどの指でもボールを動かせる。スライダーっぽい操作感はもちろん親指ボールタイプでは無理。四角いタイプであれば人差し指~薬指の腹でボールを操作できる。
  4. 本体の形
    最初に触ってみると、マウス型が手に一番フィットするかもしれない。でもそれは、逆に言えば手の形の固定を強要しかねない。四角いタイプや、左右対称のタイプであれば、だいたい自由に手の形を変えることができると思うので、寝返りと同じ原理で手首など一箇所への過度な負担を和らげることができる。
  5. ホイールの有無
    四角いタイプだとスクロールホイールが付いていないタイプがまだ出回っているので注意。さすがにネットのブラウズなどは、スクロールホイールがないとデバイスとして使い物にならん。ぼくの使っているトラックボールは、ボールの縁がリング状に回転するようになっていてスクロールホイールの役割をする。けっこうなアイデアだな。
  6. ワイヤレスかどうか
    DTMerは配線が多すぎてデスクの上とか裏とかごっちゃごちゃだったりする。少しでも配線をなくしたければワイヤレスタイプも出ているし、電池変えるのめんどくさければ普通に有線でOK。ぼくは有線にした。

上の基準により、ぼくはKensingtonというメーカーのExpert Mouse2を選択した。マウスの代替と思うと1万円弱は少し高いかもと思ったけど、使ってみたらまったく後悔のない使い心地。この記事を書こうと思ったのも、まだトラックボールに触れたことのない人に関心を持ってもらおうと思ったからだ。

みなさんの作業環境によって、またデザインの好みによって選ぶ機種も変わると思う。個々の機種については三猫さんのサイトを見れば多くのレビューが見られるのでぜひ。

さて、まだマウスを使っているDTMerのみなさま、トラックボールに乗り換える気になりましたかな。冒頭に申し上げました通り、トラックボールの良さはその機能性よりもボールを転がすことの官能的快感だということをお忘れなく、是非一度検討してみてくだせい。

至らない部分あると思いますので、コメントなどでご指摘いただけると幸いです。